【2024年大注目】話題の青春小説『成瀬は天下を取りに行く』

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#成瀬は天下を取りに行く

#宮島末奈

#新潮社

2024年本屋大賞受賞!

たまたまふらっと書店に立ち寄ってみると、入り口に話題の本として本書がたくさん並べられていた。小説は久しぶりだったが、あらすじや表紙に興味を持ち読んでみることにした。読んだ感想としては…

「成瀬に出会えてよかった」

何を言っているんだ、と思うかもしれない。しかしこれは本心だ。この本を読んだ興奮で少し変な言い方になってしまったが、本書を読み終えた後「もっと自由に生きたい」と心の底から感じたのである。成瀬の生き方を見て、自分自身は今まで何をそんなに周りの目を気にしたりうまくいかないことを恐れていたのだろうと思う。そしてこのまま自分の可能性にふたをして生きるのはもったいない、もう少しわがままに、そしてやりたいように自分の人生を生きようと考えさせられる本であった。

何かに挑戦したい人自分のやりたいことが分からない人周りを気にせず自分らしく生きたい人

そんな人々にぜひ読んでほしい一冊である。

ただ純粋に小説として面白く読みやすいだけではない魅力が本書にはある。成瀬の挑戦、そして青春の一部始終を見届けて、その過程で湧き出る自分の感情(本心)と向き合う楽しさと興奮を感じられるはずだ。

登場人物・紹介

主人公・成瀬あかり

滋賀県大津市生まれ、同市在住。島崎曰く一人でなんでもできてしまうがゆえ、他人の目を気にすることなくマイペースに生きている。いつもスケールの大きなことを言うが、日頃から口に出して種をまいておくのが大事だという考えを持っており、たとえ目標に届かなくても落ち込まない。もちろん目標達成することも多数で、かつては天才シャボン玉少女としてローカル番組で名を馳せたことも。将来の夢は、二百歳まで生きること。

島崎みゆき

自称成瀬と同じマンションに生まれついた凡人。成瀬家とは家族ぐるみの付き合いがある。私立あけび幼稚園に通う頃から、成瀬あかり史の大部分を間近で見てきたという自負があり、成瀬を見守るのが己の務めだと考えている。コミュニケーション能力が高く、友人も多い。両親は県外出身。

宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』特設サイト | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

成瀬は昔から成績優秀で、表彰の常連でなんでもそつなくこなすタイプ。学年が上がるにつれて次第に仲間外れにされるもあまり気にしていない様子である。そんな成瀬を近くで見守っているのが島崎みゆきである。

中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。

突拍子もない発言や行動には慣れている島崎も困惑した様子、しかしもっと成瀬の挑戦を見届けたいという思いから、この夏の挑戦を境に島崎は少しずつ成瀬あかり史に巻き込まれていく。なんでもそつなくこなす成瀬の常識を超えた言動の数々にあなたはきっと目が離せない。

この小説では成瀬の幼馴染の視点から始まり、章ごとに語り手の視点が変わっているのも特徴的だ。島崎みゆき、昔からの成瀬を知るクラスメイト、成瀬に一目ぼれする少年など、成瀬という人間に魅きつけられる人々から見える成瀬がとても魅力的で、それでいて成瀬の言動は関わっていく周りの人たちの人生をも変えるエネルギーがある。

そして後半部には普段は少し感情が読みづらい成瀬自身の視点から描かれている章があり、成瀬の生き方やマインド、感じていることなどが繊細に描写されている。何でもそつなくこなし突拍子なくあらゆることにチャレンジしていく成瀬の中に垣間見える人間らしさ…あなたはきっと成瀬に夢中になるはずだ。

感想

成瀬に関わっていく人々の行動が少しづつ変化していく様子がとても興味深い。成瀬の気まぐれの挑戦に巻き込まれる幼馴染は、最後まで成瀬を見届けたいという気持ちから少しずつ「自分の挑戦」になっていることに気づく。またいじめを極端に怖がり目立たないようにしてきたクラスメイトは当初一人でもひょうひょうとする成瀬を好意的には見ていなかったが、目標とも夢とも野望ともいえないことを堂々と宣言してる成瀬をうらやましく思い、初めて明確に自分の為の新たな目標を見つけて行動していくようになる。その他成瀬の行動やそのオーラなどに魅了されていく人々の変化も、この小説の見どころだと考えた。

この小説を読んでいくうちに、自分自身も何か挑戦したいと思うようになった。この世の中には「やりたいことがない」という人も多く、実際に自分も将来についてやりたいことが明確ではなく以前はそんな自分に悩むことが多くあった。

しかし本書を読んでそれはやりたいことがないのではなく、年齢を重ねていくにつれて叶いっこないと自分で自分の可能性を無意識に制限し本心が見えなくなっているだけであるのではないかと考えた。実際に子供の時はほとんどの子たちが無敵であらゆる夢を語っていたが、大人になる過程で夢を隠すようになったり、夢がわからなくなる人が多数になっていくように感じる。それは成長する過程での周りの大人からの(現実を見るべきなどの悪意なき)助言、たくさんの挫折経験、自分よりうまくいっている人を見た時の無力感などが少しづつ積み重なることで、本心では何かしら理想があるはずなのに「自分にはできない」と心の中で否定して、結果的に「夢もやりたいこともない」という状態に陥ってしまうのではないかと考えた。

「やってみないとわからないことがあるからな」…たくさん種をまいて、一つでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。

うまくやろうとしなくていい、成功しなくてもいい、だけどやりたいと感じた時にやってみる、自分の興味があることからは目をそらさない、そんな成瀬の考え方は多くの人の人生を少しだけ豊かにそして楽観的に捉えさせてくれると思う。

ハイライト

私たちはDVDをもう一度再生して、細かいところを話し合った。成瀬と私ではなく、ゼゼカラという漫才コンビだと割り切ってみたら意外と平気だった。

「…来年になったらもっと別のことをやりたくなっているかもしれない」

こんな風に目標とも夢とも野望ともつかないことを気安く口に出せたらどんなに楽だろう。

高校のクラスメイト(成瀬と同じ中学出身)、いじめを極端に怖がり目立たないように生活していた。

「気になる子がいるなら絶対に話しかけないとだめだよ」

(成瀬に一目ぼれした男の子の友人の発言)

「わたしが思うに、これまで二百歳まで生きた人がいないのは、ほとんどの人が二百歳まで生きようと思っていないからだと思うんだ。…」

たくさん種をまいて、一つでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。

著者について

宮島末奈

1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。第11回「静岡書店大賞」小説部門大賞、第39回「坪田譲治文学賞」、第21回「本屋大賞」など15冠を獲得し話題となる。続編『成瀬は信じた道をいく』とあわせてシリーズ累計75万部を突破。

(新潮社のHPより引用)

もっと詳しく知りたい方はこちらをチェック↓

宮島未奈 (@muumemo) / X

異例の大ヒット作品!『成瀬は天下を取りにいく』は成瀬になれなかった人に読んで欲しい。

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