このストーリーがハッピーエンドと言えるかどうか、それはわからない。
未来の自分が、「あのときこうしていればよかった」、「あの人にこう伝えておけばよかった」と後悔し苦しむ時間を少しでもなくすために…
ただ、今思うのは、この映画を観ることが出来て本当によかった。
人との関係はいつか終わりを迎えるし、当たり前に隣にいた人が突然いなくなる日が来る。
そんな確定して全員に訪れる未来を、そのわかっているはずの現実を、私たちは忙しい毎日の中で人は、すっかり忘れて生活している。
「終わり」を想像すること。
それは今身近にいる人、本当に大切な人が誰なのかに気づくきっかけになる。優しくなれる。もっと大事にしようと思えるようになる。
この映画ではタイムスリップという形で未来を変えようとした。
一番変えたかった未来は、結局変えられなかったかもしれないが、タイムスリップした日からの15年間を変えた。
でも現実では、過去を変えることは不可能だ。
この映画は、近すぎて見えなくなってしまいがちな「隣にいてくれる人の大切さ」を、優しく、でも確かに思い出させてくれる。
今の過ごす時間、繰り返すように見える日常が、実は当たり前なんかじゃないということ、数年後の自分にとっては、かけがえのない時間になることを気づかされる。
※以下、少しだけネタバレ含む
物語の中で印象的だったシーンがある。
松村北斗さん演じるキャラクターが、松たか子さん演じるキャラクターの最後のタイムスリップで全てを知ったあとに放った言葉:
「15年後の君に、(今目の前にいる君に)また出会いたいから、それは無理だな」
松たか子さんが「出会わなければあなたは死なないと提案した時」と提案した時のやり取り。
このセリフが、胸に深く残っている。
また、44歳のかおりと29歳のかけるが、2人が言い争う場面では、
「元の世界線でも、もっと素直に、もっと早く気持ちを伝えていればよかったのに」と強く思わされた。
想像のお話
この映画を観た私は、数十年後の未来からタイムトラベをした自分。
大切な人を失った未来から、再認識のために“今”へと戻ってくることができた私。
家族や友人、これまで出会ってきた人たち。
身近にいる大切な人の存在に、改めて気づく。またやり直せるんだと胸をなでおろす。
そして、この先出会うかもしれない大切な人にも気づけるのだろう。。
そして強く思う、「この人だけは、手放してはいけない。この奇跡を無駄にしてはいけない」と。
これまで、なんとなく過ごしてしまった時間を取り戻すために、
後悔を残したまま大切な人を失わないために、
未来で笑うために、今この瞬間から人生をやり直す。
やっとここに戻ることが出来た。
未来から戻って来た私は、今をどう生きる?
どんな選択をして、どんな行動をする?
最後に
印象的な演出も随所にちりばめられていた。
最初は恥ずかしがっていた未来のかおりが過去のかけるにキスを返すシーン、かけるがいなくなった部屋でソファーで端に座ってトーストを食べ、一度真ん中に行ったあとまた端に戻るところ。届けられた餃子が、実は彼女が頼んだものではなかったこと。(これはかけるだったんだという私の推測)
小さな描写のひとつひとつに、繊細な意味が込められていて、笑いもありつつ本当に素敵な映画だった。
最後に未来を変えたのはなくなったかける本人、何度もタイムトラベルをした時に取られたチェキを持っていたのはかけるだった。
おそらく松たか子が戻った世界でもやっぱり翔は亡くなっているし、かけるがかえた15年間をタイムトラベルした松たか子は過ごせてないのかな、戻ったかおると夫婦生活を変えたかけるは同じ世界線にいないのかな、戻ったかおるの部屋にあるかけるの遺影は笑っているのかなとか…
少し落ち着いて、改めて色々と考えてしまってまた少し切ない気持ちになった。
仕事帰りスーツのままで観た、初めての“ひとり映画”。
静かに心が揺れる、特別な時間だった。
おまけ(印象に残っているセリフをうろ覚えでメモ)
過去、現在、未来が全て同時に存在していると考えると、運命の人にはもうすでに出会っている。
結婚で一番最悪なのは無関心
これ以上、僕をドキドキさせないでください
恋愛は相手の良いところを見つけ合う、結婚は相手の悪いところを見つけ合う
